長年の巡行や経年劣化により、全体的にぐらつきやひび割れ部分が多く存在し、安全な巡行が不安視されていた。また、漆塗りの剥離や化粧金物の一部紛失、さらに全体的な汚れもあり、老朽化が目立つ状態であった。
平成30年度文化芸術振興費補助金(文化遺産総合活用推進事業)により全体的な修復を施したので、その記録をここに残す。
■前輪 <解体、木部補強修理、焼嵌め、取付>
山車から前輪を取り外し、金物を解体。木部の隙間部分を埋木などで修理。木部修理後、既存同寸新規鉄材にて焼嵌め、復元取り換え。金物を取り付け、山車に前輪を取り付け。
■後輪 <解体、木部補強修理、焼嵌め、取付>
山車から後輪を取り外し、金物を解体。木部の隙間部分を埋木などで修理。材料の損傷が著しい部分は、新規樫材に取り換え。木部修理後、既存同寸新規鉄材にて焼嵌め、復元取り換え。金物を取り付け、山車に後輪を取り付け。
■最上部高欄 <解体、修理、補強>
ロープで補強していた最上部高欄を解体修理。ぐらつきが少なくなるように補強し、斗束等破損部は埋木等で修理。
■提灯吊部分 <解体、修理、補強>
添え木などで補強していた提灯吊部分の著しく損傷している部分(ウデ木、持送り、柱等)を解体修理。ぐらつきが少なくなるように補強。
■中段高欄 <解体、修理、補強>
中段高欄部分を解体後、破損箇所、割れ部分を埋木等で修理。ぐらつきが少なくなるように補強。
■最下部高欄 <既存同寸復元>
最下部高欄部分を新規桧上小節材で既存同寸にて復元取り換え。化粧金物は再利用。
■三味線胴取付枠・人形枠 <復元>
新規桧上小節材で人形枠を既存同寸、三味線同取付枠を1尺伸ばし復元取り換え。(近世の山車入手時には、今より三味線胴取付枠が1~1.5尺程度長かったと言われている。)
■後輪車軸 <既存同寸復元>
長年の摩擦により、車軸と車輪との取り合いがぐらつき、ひび割れも見られていた車軸を、新規樫材で既存同寸にて復元取り換え。横から入れていた取付クサビを上部から入れるよう作り換え。
■彫刻・斗組部分 <既存修理>
彫刻、斗組を解体し、欠損部分を埋木などにより修理。
■白木部分 <解体、水洗い>
最上部高欄等、汚れが目立つ部分を解体。旧部材の白木部分を洗浄。
■漆部分 <解体、木地補修及び漆・金箔工事>
漆(黒塗部)を塗る部分を解体し、ひび割れや欠損部分の修理。提灯吊部(柱、枠、持送り等)、高欄部(斗組、桁、支輪裏板)及び下回り部(貫、柱、斗、肘木等)の漆の古塗装を掻き落とし、本漆を再塗装、復元。また各金箔部分の金箔再貼付。
■既存化粧金物 <取外し、欠損部既存同寸復元>
漆工事に付帯して、既存化粧金物を取外し、漆再塗装後、復旧再取付。欠損または割れてしまっている化粧金物に限り、必要最小限箇所を既存同寸にて復元取り換え。
■既存床 <既存同寸復元>
老朽化の進んだ1階、2階、3階の各階の床板を、新規桧上小節材で既存同寸にて復元取り換え。